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「
誓約 (うけい)
」
伊邪那岐神に追い出された須佐男命は天照大神の住まう天へと向かいます
そこで、身の清らかさを証明する為に誓約をして子をなします
伊邪那岐神に追い出されてしまった須佐男命は、
「それならば、天照大神にお願いして、黄泉の国に行くことにしましょう」
と、天に向かいました。すると、山や川が鳴り騒ぎ国土が皆振動しました。
それを見た天照大神は驚き、
「須佐男命はきっと私の国を奪おうと思っているのかもしれない」
と、髪をほどき、左右に分けて耳の所に輪をまくと、その輪にも、また左右の手にも大きな勾玉のたくさんついた玉の緒を持ち、背には矢を千本背負い、腹にも五百本をまきつけ、腕には威勢のよい音をたてる鞆をつけ、弓を持って待ち受けると、須佐男命に
「どうして上ってきたのか」
と問いただしました。そこで、須佐男命は
「私に異心はありません。ただ、父上に私が泣きわめいている事を尋ねられたため、母上の国に行きたいと答えた所、それではこの国には住んではならないと追い出されたので、暇をもらいに来たのです。決して謀反の心などありません。」
と答えました。ならばと、天照大神は
「それならあなたの心の正しい事はどのようにしたらわかるでしょう。」
と尋ねました。すると須佐男命は
「ならば、誓約を立てて子を生みましょう」
と答えました。
二人は、天の河をへだてて誓約をかわし、まず、天照大神が須佐男命の剣をとると三つに折ると天の真名井(まない)の水でそそいで噛み砕いて生まれてきたのが、多紀理比売命(たぎりびめのみこと)、別名を奥津島比売命(おきつしまひめのみこと)です。次に市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)、別名を狭衣比売命(さよりびめのみこと)です。そして最後に、多岐都比売命(たきつひめのみこと)が生まれました。
次に、須佐男命が天照大神の左の髪にまいていた大きな勾玉がたくさんついている玉の緒をとると、天の真名井の水にそそいて噛み砕いて生まれてきたのが、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)です。次に右の玉の緒を噛み砕いて生まれたのが、天ほ卑命(あめのほひのみこと)です。次に鬘にまいていた玉の緒を噛み砕いて生まれたのが、天津日子根命(あまつひこねのみこと)です。次に左手にまいていた玉の緒を噛み砕いて生まれたのが、活津日子根命(いくつひこねのみこと)です。次に右手にまいていた玉の緒を噛み砕いて生まれたのが、熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)です。このように5人の男神が生まれました。
そこで、天照大神は
「この後から生まれた五人の男神は私の身に付けていたものから生まれたのだから、私の子供です。先の三人の姫御子はあなたの身に付けていたものから生まれたのですから、あなたの子です。」
と告げました。すなわち、須佐男命の身に付けていたものから生まれたのは姫であり、須佐男命に悪心がない事と認めたことになったのです。
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