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「
根の堅州国 (ねのかたすくに)
」
災難を避け、大国主の命は根の堅州国の須佐男の命を訪ねます
再び、大勢の神々は大国主の命を欺いて山に連れて行くと、大きな樹を切り伏せて楔を打つと、その中に入れると、楔子を打って撃ち殺してしまいました。そこでまた、母の神が泣きながら探し、見つけ出すと生き返らせたのでした。そして、
「お前がここにいると、しまいには本当に大勢の神々に殺されてしまうだろう」
と、紀伊の国の大屋毘子の神(おおやびこのかみ)のもとに逃がしました。しかし、そこでも大勢の神々は追いかけてきてきました。そこで、母の神は
「須佐男命のおいでになる根の堅州国に行きなさい。きっとよい謀をして下さるでしょう」
と根の堅州国へ送り出しました。根の堅州国では、須佐男の命の娘の須勢理毘売(すせりひめ)が出迎えました。一目見た須勢理毘売が須佐男の命に
「大変立派な神様がおいでになりました」
と伝えると、大神が出てみて
「これは葦原色許男の命(あしはらしこおのみこと)だ」
と、呼び入れて蛇のいる室(むろ)に寝させました。そこで須勢理毘売は蛇の領巾(ひれ)を大国主の命に
「その蛇が食おうとしたならば、この領巾を3度振って打ち払いなさい」
と渡しました。それで、大国主の命は教えられたとおりにすると、蛇は自然に静まったので、安らかに寝る事ができました。翌日の夜は呉公(むかで)と蜂との室に入れられましたが、また呉公と蜂の領巾を与えて同じようにしたので、安らかに寝る事ができました。次には、鏑矢(かぶらや)を野原に放ち、その矢を探させている時に火をもって野を焼き囲みました。そこで、出られずに困っている時に、鼠が
「内はほらほら、外はすぶすぶ」
と言う声がしたので、そこを踏みしめ、地面の下に隠れている間に火は焼けて過ぎました。そして、鼠が鏑矢をくわえ出して来たので、無事に鏑矢を探し出すことができました。
大神がもう死んだと思い野にやってくると、大国主の命がその矢を持ってきたので、家に連れて帰ると大きな室に呼び寄せ、頭の虱を取らせました。そこで、その頭を見ると呉公がいっぱいいます。時に、須勢理毘売が椋の木の実と赤土とを与えると、その木の実を食い破り赤土を口に含んで吐き出しました。すると、大神は呉公を食い破って吐き出しているのだと思い、感心して寝てしまいました。そこで、その大神の髪をとってその室の屋根のたる木ごとに結いつけると、大きな岩で室の入口を塞いでしましました。そして、須勢理毘売と共に、大神の宝物の太刀弓矢、また美しい琴を持って逃げ出しました。ところが、その琴が樹にさわって音を立てました。それを聞いた大神は驚いてその室を引き倒してしまいました。しかしたる木に結び付けられていた髪を解くあいだに二人は遠くに逃げてしまいました。そこで、黄泉比良坂(よもつひらさか)まで追ってくると、遠くに見える大国主の命に向かって
「そのお前の持っている太刀や弓矢をもって、大勢の神を坂の上に追い伏せ河の瀬に追い払って、自分で大国主の命となり、その私の娘の須勢理毘売を正妻として、宇迦(うか)の山の山本に大磐石の上に宮柱を太く立て、大空に高く棟木を上げて住め」
と呼びかけました。そこで、大国主の命は言われた通りに国を作り始めました。
先の八上比売とは、前の約束通りに結婚していましたが、正妻となった須勢理毘売を恐れて、生んだ子を木の俣に挟んで帰ってしまいました。そこで、その子の名を木の俣の神といい、またの名を御井の神ともいいます。
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