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祟神天皇の話が続きます。

この天皇の時に、疫病が流行って多くの人々が死にました。そこで、天皇はこれを憂慮して、神を祭って寝た夜に、大物主の大神が夢に現れて
「このように病気が流行っているのは、私の意思です。意富多多泥古(おおたたねこ)に私を祭らせたならば、鎮まるであろう。」
と言いました。
そこで、急使を四方に送ってその人を探させたところ、河内の国の美努(みの)の村で探し出す事が出来ました。そして、
「お前は誰の子か。」
と尋ねると、
「大物主の神が、陶津耳命(すえつみみのみこと)の女の活玉依毘売(いくたまよりびめ)と結婚して産まれたのが、櫛御方命(くしみかたのみこと)です。その子が、飯肩巣見命(いいかたすみのみこと)、さらにその子が建みか槌命(たけみかづちのみこと)で、さらにその子が私です。」
と答えました。
そこで、天皇は、
「天下が平らぎ、人民が栄えるだろう。」
と言って、この意富多多泥古を神主として御諸山で大物主の神を祭らせました。そして、伊迦賀色許男命(いかがしこおのみこと)に命じて、祭りに使う皿を多く作り、天地の神々の社を定めました。また、宇陀の墨坂の神に赤い色の盾矛を献上して、大阪の神に墨色の盾矛を献上し、坂の上の神や河の神に至るまでことごとく残るところなく幣(ぬさ)を献上しました。これによって、疫病がおさまりました。

上に述べた活玉依毘売は美しい方でした。そこへ、形姿威儀並びない一人の男が夜中に姿をあらわしました。そして、互いに愛しあい結婚して住んでいるうち、活玉依毘売は妊娠しました。
その妊娠を知った父母は怪しんで、
「お前は自然に妊娠しました。夫がないのに、どうしてですか。」
と尋ねたところ、
「名も知らない立派な男が、夜な夜な姿を現していたのです。」
と答えました。そこで、その父母が、その人を知りたいと思い、
「赤土を床のほとりに散らし、麻糸を針に貫いて着物の裾に刺しなさい。」
と教えました。
そこで、そのとおりにしてみると、朝になると針をつけた麻は戸の鉤穴から貫け通って、残った麻は三輪だけでした。糸をたよりに尋ねていったところ、三輪山の神の社にたどりつきました。そこで、かの男が神である事がわかったのです。
そして、その麻の三輪残ったことによって、三輪というようになったのです。
この意富多多泥古命は、神の君、鴨の君の祖先です。