|
「
景行天皇-倭建命1- (やまとたけるのみこと 1)
」
いよいよ倭建命の英雄譚が始まります。
天皇が小碓命に
「お前の兄は、どうして朝夕の食事に出てこないのだ。お前が出てくるように教えてこい。」
と命じました。しかし、それから5日たってもまだ出てきません。
そこで、天皇が、小碓命に、
「どうしてお前の兄は長いこと出てこないのか。まだ、教えてないのか。」
と尋ねたところ、
「既に教えました。」
と答えました。そこで、
「どのように教えたのか。」
と尋ねると、
「朝早く、厠に入るところを待ち構えて、捕まえて打って、手足を折って薦に包んで投げ捨てました。」
と答えました。
そこで天皇は、その乱暴さを恐れ、
「西の方に熊襲建兄弟がいる。彼らは服従しておらず、無礼なものどもだ。行って彼らを倒してこい。」
といって送り出しました。
この時に、髪を額に結っていました。そこで、小碓命は叔母の倭比売命の衣装をもらい、剣を懐にしのばせて出かけました。
そうして、熊襲建命の家についてみると、家の周りには軍隊が三重に囲んで守り、室を作っていました。そこで、新築の祝いをしようと言い、食べ物を用意しました。そして、近所を歩いて宴の日を待ちました。
いよいよ宴の日となると、結っていた髪を女性のように下ろし、叔母から借りた衣装を身に着け女達の中に混じって中に入りました。
熊襲建命兄弟が、その姿を見て気に入り、自分達の中に座らせると盛んに手拍子をとって遊んでいました。その宴も盛んになった時に、小碓命は懐から剣を取り出し、熊襲建の衣の襟をとって剣を刺すと、弟の建がそれを見ておそれて逃げ出しました。そこで、その後を追うと背中から剣で刺しました。そのとき、その熊襲建が
「その剣を動かさないで下さい。申し上げたいことがあります。」
と言ったので、そのままにしておくと、
「あなたはどなた様ですか。」
と尋ねたので、
「わたしは纏向の日代宮にて天下を治めている大帯日子於斯呂和気命天皇の御子、倭男具那王という者だ。お前達熊襲建が服従しないということで、征伐に来たのだ。」
と答えました。すると、
「本当にそうでしょう。西の方に我々二人以上の武勇の人はいません。大和には我々よりも強い人がいたのです。そこで、名前を献上いたします。これからは倭建命と名乗るとよいでしょう。」
というと、息絶えました。
その時から、その名を讃えて倭建命というようになりました。
そうして、帰る時に山の神、河の神、海峡の神を皆平定して、都へと帰りました。
|
