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「
天の岩戸 (あまのいわと)
」
身の清らかさを証明する事となった須佐男命は天の世界で暴れまわります
それを恐れた天照大神は天の岩屋戸の中に隠れてしまいました
古事記の中でも有名な部分で、日蝕の喩えだといわれてもいます
「身に付けていたものから生まれたのが女だったのは、我が身が清らかだった為だ」と勝ち誇った須佐男命は勢いに任せて乱暴を働きました。
田の畦をこわしたり、溝を埋め、はたまた新穀を食べる御殿に屎をし散らしたりしましたが、天照大神はそれを善い方に解釈して咎めませんでした。しかし、機織場の屋根に穴をあけて斑駒の皮を投げ込んだ為、それに驚いた機織女が機織に使う板で陰(ほと)をついて死んでしまいました。さすがに天照大神もこれには恐れて、天の岩屋戸の中に姿を隠してしまいました。そのため、天は暗闇となり、地上もことごとく闇に包まれてしまいました。そして、多くの災いが世界を覆ったのです。
こうした次第で、神々は天の世界の天の安の河の河原に集まり、高御産巣日神(たかむすひのかみ)の子の思金神(おもいかねのかみ)に考えさせると、まず長鳴鳥を集めて鳴かせました。
次に天の安の河の河土にある堅い巌を取って来、また金山の鉄を取って鍛冶屋の天津麻羅という人を尋ねると伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)に命じて鏡を作らせました。そして王祖命(おうのおやのみこと)に命じて大きな勾玉のたくさんついている玉の緒の珠を作らせ、天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(ふとだまのみこと)とを呼んで天の香山(かぐやま)の男鹿の肩骨をそっくり抜き、天の香山の波々迦(ははか)の木を取るとその鹿の肩甲骨を焼いて占いました。
次に天の香山の茂った賢木を根こそぎとると、上の枝に大きな勾玉のたくさんの玉の緒を懸け、中の枝には大きな鏡を懸け、下の枝には楮(こうぞ)や麻の皮を晒したものをさげ、布刀玉命がこれを捧げ持ち、天児屋命が荘重な祝詞を唱え、天手力男神(たぢからおのかみ)が岩戸の陰に隠れて立ち、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が天香山の日影蔓を手襷に懸け、真拆(まさき)の蔓を鬘として天香山の小竹の葉を束ねて手に持つと、天照大神が隠れている天の岩戸の前に桶をふせて踏み鳴らし、神懸りして衣裳の紐を陰に垂らした所、天の世界が鳴りひびいて多くの神々がいっしょに笑いました。
それを聞いた天照大神は不審に思い、岩戸をわずかに開けると、
「わたしが隠れているので、世界は暗くなっているでしょうに、何故そのように楽しそうなのでしょうか」
と尋ねました。そこで、天宇受売命が、
「あなた様よりも尊い神様がおいでになったのです」
と答えました。そして、天児屋命と布刀玉命が先の鏡を差し出して見せると、ますます不思議に思った天照大神が少し戸を開いた所を、隠れて立っていた天手力男神が力いっぱい戸を開くと天照大神を岩戸の中より引き出しました。そして、布刀玉命がその入り口に標縄(しめなわ)を引くと、入れなくしました。こうして、天照大神が岩戸から出たので、世界は再び明るくなったのです。
そして、この原因を作った須佐男命の処分を話し合い、たくさんの品物を出させて罪を償わし、鬚と手足の爪を切ると下界へと追い払ってしまったのでした。
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